成人の発達障害では大きく自閉症スペクトラム障害(ASD、アスペルガー障害)と注意欠如多動性障害(ADHD)にわけられます。ここでは自閉症スペクトラム障害について説明します。
自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder、略称ASD)
自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害を含む障害単位です。これらは本質的には同じ1つの障害単位であると考えられており、症状の強さに従っていくつかの診断名に分類されます。一般的にはまだ耳慣れない用語ですが、従来の国際的な発達障害の診断基準カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ内容を指しています。
この「自閉症スペクトラム障害」のうち、知能指数が高い(IQ70以上)場合は「高機能自閉症・アスペルガー症候群」、知能指数が低い(IQ70以下)の場合は「自閉症」にあてはまります。
自閉症スペクトラム障害の3つの特徴
1.社会性の障害
- 対人関係、社会面での適切な相互関係を作ることが困難。
- 他人と興味を共有することができない。
- 感情が伝わらない。視線が合わない、友達が作れない。
2.ことばやコミュニケーションの障害
- ことばが遅れたり、オウム返しをする。
- 一問一答式の会話になりがちで会話が続かない。
- たとえ話をことば通りに受け取ってしまう。
3.イマジネーション(想像性)の障害
- 人が自分とは違う気持ちを持っていることを想像しにくい。
- 相手の言葉や表情、周囲の状況、雰囲気、行動の意味を読み取ることが難しく、人の気持ちを推し量るのが困難。
- 遊びのルールや役割を理解出来ない。ごっこ遊びが難しい。
- 限られた事物へ固執しやすく、同じ遊びをしたり、同一性保持行動、常同行動などとなって現れる。
- ものの位置を変えたり、どこかへ行く時に普段と違う道を通るとパニックを起こしたりする。
そのほか、みられやすい行動特徴としてあげられること
- 感覚の過敏さや鈍さ、調整、統合能力の弱さ
- 多動、衝動性
- 癇癪、自傷他害、パニック
- 能力の不均衡さ・・・領域ごとの能力差が大きい
ノーベル賞を受賞したアインシュタインも高機能自閉症(知的障害を伴わない自閉症)だと言われています。彼は「ゆっくり話してくれなきゃ、何を言っているのか分からない」と語っていたそうです。人の話を聞いて理解することが困難なのでしょう。こういう場合は、文字にすると長文でも理解できる人は多いようです。
米俳優のトム・クルーズも学習障害(LD)があります。彼は文字を読むことができません。そのため台詞は全て、他の人がテープに吹き込んで覚えているそうです。
最近では、レオナルド・ダ・ヴィンチが、アスペルガー症候群であったことが発見されています。
日本では、黒柳徹子さんが有名です。黒柳さんの幼少時を書いた『窓ぎわのトットちゃん』には、障害の症状が出ています。幸い転校先の校長先生がとても理解のある人だったので、黒柳さんは良い方向に成長されたのでしょう。
発達障害は周囲との環境の不一致で、うつ病や統合失調症などの二次障害を招くこともあります。
治療
HIKARI CLINICは小児、思春期の発達障害は援助の対象ではありません。これは小児、思春期の場合は専門的な援助が必要だからです(児童・思春期専門のクリニックにご相談ください)。当院では成人の発達障害に対しての診断、援助を行っています。
発達障害が原因となり、周囲との折り合いが悪く、二次的にうつ状態や不眠、各種の精神疾患を生じていることがあります。
当院の発達障害外来では、診断のための問診、既往歴の聴取、心理検査を行い診断を行ったのち、発達障害への理解を深める心理教育や、二次障害に対する治療、家族や周囲への説明を行います。また発達障害の患者さんを支援するグループ療法HAG(Hikari Autism Support Group)を行っています。是非ご相談下さい。