双極性障害(躁うつ病):Bipolar Disorderとは

はっきりした躁状態がある場合は双極 I 型障害と呼ばれ、軽躁状態とうつ状態を繰り返す場合は、双極 II 型障害と呼ばれます。軽躁状態はむしろ調子の良い状態と感じるので、 双極 II 型障害は本人や周囲の人にとっては、「うつ病」と感じられます。しかし双極 II 型障害ではうつ状態が再発しやすいことから、双極性障害に含められます。

躁状態とうつ状態

躁状態になると、とにかく気分が高ぶり、機嫌よく誰かれとなく話しかけて回ったりし ます。夜眠らないでも平気で、自分は誰よりも偉いと感じているので、深夜・早朝でも気 にせず電話をかけたりします。良いアイデアがどんどん浮かんでくる上、いつもより活動的になるので、どんどん行動が広がり、すばらしいアイデアが浮かんだとか、新しい会社を作るとか、一見調子が良いように見えますが、一方では、気が散りやすく、軽率になり、 自制心を失っているので、こうした行動の結果、多額の借金を抱えたり、人間関係を乱し たり信用を失ったりして、場合によっては社会的地位を失ってしまうこともあります。

うつ状態では、一日中気分がゆううつで、いつも見ていたテレビや新聞にも興味がもてず、何をしても楽しめません。何も食べる気にならず、何 kgも体重が減ってしま います。夜は寝付かれない上、暗いうち目がさめてしまい、過去のことを悔やんだり、自 分を責めたりすることばかり考えます。逆に食欲が増えたり(過食)、眠りすぎてしまう (過眠)という症状が見られることもあります。仕事をしようとしても、考えが進まず、 集中力や決断力がなくなり、ひどく疲れやすいなどで、とても仕事はできません。何事も おっくうになり、機敏に行動できません。場合によっては、じっとしていることができず、 立ったり座ったりと落ち着かなくなる場合もあります。しまいには、もう死ぬしかない、 と自ら命を絶とうとする人もいます。

躁でもうつでも、重症の場合には、妄想(現実ではないことを信じてしまう)や幻聴(実 際には存在しない声が聴こえる)が見られる場合もあります。躁状態では、誇大妄想(超能力がある)、うつ状態では貧困妄想(破産した)、心気妄想(不治の病にかかった)、 罪業妄想(大変な罪を犯した)などが特徴的です。

双極性障害では、このように両極端な二つの症状が現れることが特徴で、躁状態からう つ状態を経過して治る、あるいはうつ状態から躁状態を経過して治る、という風に、一連 の病相として現れる場合も多いようです。経過中躁とうつが入り混じった状態、すなわち混合状態が現れることもあります。双極性障害の原因躁やうつの原因は、脳内の情報伝達の乱れによると考えられています。ストレスはきっかけにはなりますが、直接の原因ではありません。治療薬の作用などから、躁状態、うつ状態では、ドーパミンなどの脳機能を全般的に調整している神経伝達物質の機能が変化し ていると考えられています。

双極性障害の治療

薬物療法

双極性障害は、放置すると再発を繰り返しやすい病気ですが、幸い、再発予防に有効な 薬物が多数知られており、これらをうまく使うことで、かなりの程度コントロールするこ とができます。

双極性障害の再発予防には、リチウムを初めとする気分安定薬と呼ばれる薬、およびオランザピンなどの非定型抗精神病薬が用いられます。

精神療法

双極性障害の治療目標は下の3つです

  1. 再発を防ぎ、普通の社会生活を送れるようにする
  2. 躁状態を早期にコントロールし、社会生活への影響を最小限にとどめる
  3. うつ状態で の自殺を予防し、苦痛を減らす

躁状態、うつ状態自体は時間がたてばかならず治るものですが、たった1回の躁状態でも、放置していると職業生活に大きな影響を与える可能性があります。そのうえ、2回、3回と躁状態を繰り返すと、家族との折り合いが悪くなってしまい、離婚などの原因になったり、失職したり、信用を損なうなど、社会的生命の危機にもさらされかねません。従って、躁状態、うつ状態が良くなってから の治療をどうするかが、最大のポイントになります

双極性障害の患者さんは、たった一晩の徹夜でも、急に躁状態となってしまい、再発す る場合があるなど、生活リズムの変化が悪化の要因になると考えられています。そのため、 毎日の生活を規則正しくすることはとても重要で、再発予防につながります。